2016年10月

その時…その一瞬の思いをのせて

晩秋を粧う静寂に包まれた、
みなもに映りこむ幽玄な茜… 小谷鎌池

鎌池14

まだ夜が明けないうちに、この場所へ来るようになったのは
もう何年も前からになるのです。
前日にあたためられた池の表面には、
この冷たい大気の中で、少しばかりの霧になって辺りに漂う。鎌池10

 鎌池12

山間の窪地にあるその水面は
千メートルをこえるその標高から、強い風にさらされます。
ですが、橅やダケカンバなどの木々につつまれて
静かにしずかにその反映をたもつのです。

そのような景色をみつめていると
ふと、人の心もおなじように…
その時々でいろいろに移ろいゆくものなのかな

そんなことを考える秋の一日になりました。

 

ここは、ホテルからはおよそ1時間半…
山間を縫うように錦秋のトンネルをくぐり抜けると
鏡面の池に辿り着くのです。

こころの色

白馬八方尾根…
唐松岳や五竜岳に向かうこの山道を歩いて行く道程で
天空を映しこむ神秘の水たまりがあります。
季節のうつろいとともに、
それに映る色彩を思い思いに纏う…八方池

八方池1八方池2

秋から厳冬に向かうこの時期は、
周期的に強い風が吹き荒れます。
鏡のように静かな水面も、
その時が過ぎゆくまでは、細波たった表情に一変します。

この日は、いくら待ってもやさしい水面に戻ることはありませんでした。
ですがそんな特別なところにいつかまた…
会いに来る楽しさを残してくれる… そんな気がするのです。

次にここを訪れるのは、白馬の山々が真っ白な衣装をまとった時、
水面にその姿を大切にたいせつに抱いた頃になるのです。

白馬八方迄およそ1時間、ゴンドラを経由して尾根伝いに1時間
ここにはホテルから2時間半の行程です。
そしてその先には猛々しくそびえる五竜岳と唐松岳をつなぐ乗越があり、
更にその向こうには…

 剣岳モルゲンロート

剱岳…3千メートルにわずか1メートルだけ、とどかない頂があります。
日本地図で最後の空欄地帯であった「剱岳」
人を寄せ付けない厳しさの中に、一瞬のあいだ見せてくれる淡い暖色は
それだけでも心の中にいつまでも残る、大切なたいせつな情景なのです。

いま…私のいる大切なところとは…

お客様は山へは登られますか…

安曇野でひときわ目を引く美しい三角の常念岳と並んで
その左側に、優しい稜線を持つ蝶ヶ岳があります。
雪解けとともに姿を現す美しい蝶々の形…
農業を営む方には、田植えの時期の目安となるその雪形は、
山の呼び名の由来となっているのです。

3千メートル級の峰々を従える穂高連峰は、
これらの前山が屏風のように安曇野を優しく包み込んでいるために
此処からはなかなか見えません。
そんな優しさを持つ蝶ヶ岳に行ってきました。蝶が岳から日の入り後槍

 蝶が岳から槍

大好きな、そして思い入れのある山…
その山頂に立つことの嬉しさは、何かを成し遂げた時に
思うことと通じるものもありますね。
ですが、自分のいる山の姿はその場からは望めないものでもあるのです。
そしてそんな山容に、離れた所から改めて気づかせてくれた蝶ヶ岳。
私にとって、もうひとつ大切な場所ができました。

お客様にとって、大切な場所はどこですか…
そんな処が、いつまでも変わらずに残していければよいですね。

蝶が岳日の出
この雲海の中に安曇野があるのです。

下山の途中、辺りに漂う甘い綿菓子のような香りに気がつくのです。
ずっと昔を思い出して、心がしめつけられるような懐かしさ。
透明なガラスの瓶に詰め込んで、そっと持って帰りたいそんな香りです…
桂の落葉である事を、後になって知りました。

 

秋色の山裾におもうこと…

秋の新蕎麦の時期ももうすぐの頃です。
安曇野では10月も末になると、秋の新蕎麦が登場します。
蕎麦の好きな方が、ずっと待っていたこの風味は、
蕎麦の産地によっても、また調理の方法によっても違うのです。
奥が深いですね…木崎湖の蕎麦
蕎麦畑を探しに行って、水田からの転作が多い事に気がつきました。
山間部の少しずつの小さな畑に蕎麦の花が咲く…
そんな風景画を思い描いていた私にとっては、少しだけ以外に思うことでもあります。
長野県のソバ栽培は、既にずっと前から水田転作の方が、畑作より多くなっているそうで、
畑の比重は36%ほどになるそうですね。
そしてそのうちのいくらかは、蕎麦畑になるのです。
見渡す山裾まで広がる水田の風景…
ですが、近年は休耕田や麦、蕎麦などの畑が
単色の中に散りばめられた、その色を持って色の諧調を織りなすのです。
稲作農家の方々の気持ちを思うと、複雑な心になった一日でした。そば

今年は…大きく育った蕎麦の実がどんどんと色濃くなっています。
そして収穫の時期ももうすぐですね。
ぜひ、自慢の一品を食しにお越しくださいね。