深夜に徘徊するかわいい妖精たちのこと・・・

夜な夜な、ホテルの芝生の上を可愛らしい妖精たちが跳びまわるのです。
初めてその光景を目にした時は、闇夜にはずむ、小さな小さな丸い黒い影・・・
『なんやろぅ、あのまるいのん・・・』
時々ひとところにふたつが並び、そして時々重なる丸い影。
丸になり、楕円になって二つの影が重なったり離れたりするのです。
そしてそれは月の明りに照らし出されて・・・
現われたのは、小さなかわいい兎だったのです。

どうしても撫でてみたい衝動を抑えることが出来ずに、
こっそり後ろから忍び寄る。
後ろ向きの兎はまだこちらには気がついていないように思えたのですが、
少し近寄るとその何倍もの距離を跳び離れてこちらの様子を伺うのです。
深夜に兎と鬼ごっこ・・・
『キツネにつかまんなよ・・・』とこっそりと思った夜でした。

冬至が近づくこの時期は、日が差し込むのが7時半頃になるのです。
白く輝く教会に続くその芝生の坂に、可愛らしい足跡をみつけました。
これも、野ウサギの忘れものなのです。
『また遊びにこいよ、おまえたち・・・』

お蕎麦をいただく旅人のこころとは・・・

『新そば』・・・
この素敵な響きを耳にするのも、少なくなる時期になりましたね。
収穫したてのその風味と、そして淡いやさしい緑色のそばは早い時期でないと
味わうことができないのです。
そしてこの、今年収穫された秋そばを、その時その時に頂く。
暖簾の横に誇らしげに、半紙に毛筆で書かれている『新そば』の文字・・・

信州に住むようになるまでの頃は、晩秋にはかならず安曇野に向かったのです。
素朴な和風の建物に『そば』の暖簾
そんなお店が沢山並んだ街道を散策するのも嬉しいものでした。
『わさびはね、汁にとかしたら風味が無くなるから、蕎麦にのせて食べるといいよ。』
向かいの座席に座られた、旅慣れた様に見受けられる方々から聞こえてきたそんなうん蓄に
『ほんまかいな・・・』などと思いながら、こっそり真似してみたりするのも楽しいものでした。
そしてその食べ方が、今ではしっかりと身についてしまったりしているのです。

今回のお蕎麦屋さんは、穂高駅の近くにある『一休庵』
『新そば』十割は一日十人前までの限定なのです。
ほんのりと黄緑がかった灰色の輝きを見つめていると
『お蕎麦は茹でたてが一番美味しいので、長時間眺めていたらあかんでぇ』
という、わさびの時のもう一つの囁きが頭の隅を過ぎったのです。
こんなにも美味しいものを食べられる幸せを、しみじみと感じながら、
心をこめて・・・『いただきます』とつぶやくのです。


わさび茶漬けです。


 

 

 

 

 

玄関わきには湧水がありました。

二十年近く穂高に住んでいながら、今まで訪れたことのなかった有名なお店です。
まだまだ知らない素敵なお店が沢山あるんやなぁ・・・などと感慨にふける一日となりました。

ある虹の日の思い出のこと・・・

あれは私が小学1年生か2年生の頃…
降る雨にお日様の光が重なる、その不思議な空間をぬって、
生駒の山並みがすぐ近くにある様に見えたのです。
今も鮮明に記憶に残る、霧雨の隙間をぬって深呼吸するように、
大きく見える鮮やかな深い緑色。
そしてその麓から、きれいな虹がかかっているのを見つけてしまったのです。
誰でもが、多分子供のころに一度は夢見る虹の橋の、その麓の街への大冒険…
大切な故郷で見る山並みは、いつも薄い青い色。
空の青と同化して、稜線が混じり合っていることも有ったように記憶している。
『今日やったら、なんかあそこまで歩いて行けそうな気がするでぇ!』
子供の頃は、行動範囲の殻を破るたびにドキドキし、そして少しばかり成長する。
隣り町の境界を越え、虹の美しさに引き寄せられながら…
そして幾つかの町の境界を跨いで、幾つかの大きな道路を渡るとそこは、
来た事の無い隣りの市町村。
なのに、これだけ歩いても歩いても、虹との距離は一向に少なくならないのです。
達成することなく引き返してしまった小さな小さな冒険に、
悔しさと、そして心が少しだけ温かくなったことを記憶しているのです。

いつもの桜の樹の上に、掛かっている虹を見つけた時にそんなことを思い出しました。
そんな冒険を、懐かしく思いながらファインダーを覗いてみたりするのです。
そして、この雲に隠れて北アルプスは、その真っ白い雪の衣を沢山かさねるのです。

穂高ビューホテルから南の方角に輝く星々の光跡です。
真南の星は真っ直ぐ進み、そして左右の星は真ん中に寄ってそして離れていくように
見えるのです。

つい得意げに…虹の小さな冒険の報告をして、
両親に叱られたことも今では本当に良い想い出なのです。
お日様と雨降りがかさなる時を『きつねの嫁入り』というのですね。
なんかしら、かわいらしい呼び方ですね。

冬が来るまえに・・・

河童橋のたもとで執り行われる神事
上高地閉山式・・・今年も山の神様に感謝の気持ちを伝えに行ってきました。

安曇野から、国道158号線を通って山の懐に入る道程で、秋色がどんどんと薄れていき、
葉を落として冬支度を整えた木々が目立つようになってゆきます。
そして上高地は、雪を従えた峰々を背景に、
凛と引き締まった美しい景観を見せてくれるのです。
たった一日で・・・一足先に冬の中に迷い込み、
そして時間を逆戻って秋の中に帰ってゆくような感覚は、
何年も繰り返し通っていても、不思議な感覚にとらわれます。

日付が変わる頃・・・河童橋付近から望む穂高連峰です。
じっとして動かない星が北極星です。そして周りの星は一日かけて一周するのです。
満天の、降るような星空を眺めながら、『今年も、また来たよ・・・』

閉山式の後は、上高地には雪が降り続いたそうなのです。
『また来年・・・此処へ・・・上高地に来るんやで・・・』
そしてそれは、山々に話しかけられたような、そんな気持ちにさせられるのです。

しあわせなこととは・・・

時刻は午後7時・・・日の入り後の町の光が増してくる頃です。
中央から左の方向にひと際強く輝く一本の線は、国道147号線。
この道をずっと北上すると、白馬、小谷を経由して糸魚川に出るのです。
初めてここから夜景を眺めたのは、もう25年も前のこと。
当時はこの国道沿いにも、商業施設が殆どなくて、
その頃に撮った写真と比べてみても、ずいぶん明るくなりましたね。
それではここから燕岳への登山道のご案内です。
まず、登山計画書を提出し出発です。

せせらぎの音が聴こえなくなった頃、第一ベンチに到着です。

合戦小屋への荷物用リフトをくぐると、第二ベンチです。
唐松の葉も大分少なくなりました。

平坦な木の根道が続きます。

再び急な坂が続き、見えてくるのが第三ベンチです。

遠くに富士山が望める、富士見ベンチに到着です。

夏には松本市波田特産のスイカで栄養補給、沢山の方が休憩します。
ここ合戦小屋は冬の支度で忙しそうでした。

視界が開けて、山小屋と燕岳が見えるのです。

そして・・・北アルプスの女王、燕岳の美しい山容が現われます。

住宅メーカー:『お客様は登山がお好きでしたね?』
私:『はい。そうなんです。』
住:『そうだと思って、2階への階段を登山道仕様にしてみました。』
私:『登山道?・・・』
住:『本格的に土も盛ってあります。そしてシャワーで放水して雨天も再現可能です』
私:『あの・・・普通の階段にして下さい。』

山への憧れが強くなった頃、そんな夢をよくみたのです。
そして笑顔が素敵な山小屋のスタッフに、温かい気持ちを頂いて、
明日からまた、一生懸命頑張る気持ちになるのです。

私:『山登り、最高。そして下り坂・・・最高!』

モルゲンロートの優しい色に会いに行くこと・・・

旅に出られるお客様にとって、そして山の魔力に魅せられた私にとっても、
天気図を眺めながら、明日の天候をじっくり考え込むことが多くなる季節ですね。

信州の秋は、農家の方々はその作物の収穫時期と重なりますね。
安曇野には、沢山のりんごや葡萄の畑が広がっているのです。
そしてその果実の実を引き締め、色付きを良くするのに最適な現象が、
盆地特有の霧なのです。

真ん中に見えるのは常念岳・そして左が蝶が岳です。ホテルはその間の谷筋の霧との境界の少し上にあるのです。

安曇野は霧がよく発生する土地として知られていますね。
深夜から明け方にかけて、ぐっと気温が下がった朝は、
辺り一帯を濃霧がおおい尽くすのです。
見上げた空が、ぼんやりとほのかに明るくなり始めたころ、
その濃霧の存在感が大きくなってくるのです。

ほんの少しの先の様子も、探り探り進まなければならない程の
濃い霧に包まれた安曇野の里は、本当に美しいのです。
そしてそんな日は・・・例外なく美しい青空が広がっているのです。
太陽が少し高くなる頃から、白と真っ青の境目が曖昧になってゆき、
そしてその中に浮かび上がる、橙色の柿の実が現われる様は、
たとえようもなく美しいものなのです。

ホテルの山とは向い合せの、東に位置する長峰山は、
そんな安曇野を一望できる、素敵な場所なのです。
ここからお車で40分程・・・
朝日が差し込む半時間ほど前から、色彩のうつろいゆく様を見にいくのも、
ほんとうに幸せな事なのです。


左から、爺が岳・鹿島槍ヶ岳・五竜岳そして白馬三山と続く後立山連峰です。

モルゲンロート…
この色に夢中になれるのも、一時のこと。
少しずつかわりゆく山の色に、いつもいつも感動を覚えるのです。

不思議な魅力に誘われること・・・

ずっと続いた雨が、ほんの一日だけ途切れた日・・・
小谷村の奥深い山の中で、すばらしい空間との出会いがありました。
それは、今まで味わったことのない、不思議な味覚を覚えるカレーの店・・・
そして注文を頂いてから、ご主人が心を込めて挽くコーヒーの香り・・・
何度も暖簾の下をくぐり抜けたくなるそんな玄関先には、
立てかけた緑板に、こころ惑わす魅惑的なお品書きが・・・

築140年ほどを経た佇まいの、そんなひき込まれる程に美しい古民家が、
当時の姿のまま突然に、現在に滑りこんできたかのような、
そして、帰る時刻を忘れてしまう程の素敵な空間だったのです。

小谷の鎌池は、もう何度もご紹介させていただきましたが、
糸魚川に向かう国道から、小谷温泉にわかれる県道を入ったあたりの山里です。
ぜひ、立寄って欲しい所でありました。

http://13gatsu.net/

風がやんだ秋の昼下がり、湖面に映える薄紫色に誘われて、
少しの間、その色彩が蝋燭の灯の様に揺らぐのを眺めておりました。
今年は雨降りが続いて、葉っぱも黄色のままで足踏みしているように思います。
それでも、その時期になるとどうしてもそこに引き寄せられる、
そんなものを自然の力は、もっているようです。


写真はホテルから40分程の仁科三湖のひとつ、中綱湖の大山桜です。

めぐる季節のなかで・・・

秋も日ごとに深くなっていきますね。
気温が下がるこの時期は、星空が美しく輝いて見える時期でもありますね。
お月さんが姿を見せない時間帯でなおかつ雲が無い条件が揃って、沢山の星たちの饗宴を楽しむ。
そんなころを探して星々にあってきました。
オリオン座が山頂の陰から姿を現して、中央の3つが並んで見える頃
贅沢すぎる時間が過ぎてゆくのです。
中ほどから右上に一際太く引かれたオレンジのライン…
ベテルギウスの光は、640年前に放たれた美しい色なのです。
写真は黒部立山アルペンルートの真ん中、
立山三山をつつみ込む星空です。

ここ穂高ビューホテルの敷地からも、条件がそろった夜は、降る程の星空が見えるのですよ。
次回は、ここからの星空の写真をお届けしますね。

夏のあいだ、白い小さな梅の様な花を付けていた『チングルマ』は、
山の秋も深まる頃、風車の様な綿毛を付けた実をつけるのです。
風にそよぐふわふわとした、その可愛らしい姿を見るたびに、
この過酷な自然環境の中で、ずっと生存していくことのできるこんな小さな植物に
敬意にもにた気持ちを抱くのです。
陽光を一生懸命綿毛に抱きこんで、輝くその美しいひとつひとつに、
『今年もまた出会えたなぁ…おまえたち…』
などと思いながら、この場所にいることに感謝したりするのです。

大蛇の涙がこしらえた、神秘の池のこと・・・

秘境の県境に至る道は、ゆく先にもかなりの残雪があるのです。
昔、雌の大蛇が悲しんで泣きながら逃げる途中で落とした涙・・・
その落ちた涙が池になったといわれる小谷の鎌池は、
太古のブナの森に囲まれ、誰にもみつからないように、
静かに隠れるように佇む美しい池なのです。
その神秘的な景色に出会うことが、待ち遠しく思えるのです。

いつもは車ですり抜ける緑のトンネルも、
歩きながら、ゆっくりと過ぎる時間の中に、
吹き抜ける風とともに季節の息づかいを感じる。

雨飾山の登山口との分岐から、雪を融かして芽を出す黄色いフキノトウの群生地を横切りながら、優しい緑の森をぬける。
そして今年初めて出会うその池は・・・
深い青色の諧調の中に、鮮やかに緑を散りばめて、
美しく輝いて見えるのです。


あともう少しで雪も融け、池のほとりまでも車で入れるのです。
そしてここは、ホテルから車でおよそ1時間半ほどの所にあるのです。

儚く美しい白い花のこと・・・

深い森林の中をやさしく風が通りぬける…
そんな風の通り道を追っていると、その林床に緑と純白の織り成す絨毯が敷かれているのを見つけました。
ずっと奥深くまで続いているその明暗の差は、射し込む光によって更にその鮮烈さを増す。
ここは奥上高地の徳沢付近の、ニリンソウの群生地です。
一つの茎に花柄を2本伸ばして、かわいらしい白い花が2輪並ぶ姿は、通りぬける風にやさしく揺れて、
儚げな、それでいて互いのやさしさを感じさせます。
花言葉の『友情』や『ずっと離れない』は、そんなところから生まれたのですね。

お客様は上高地へは行かれたことがございますか?
生まれたての柔らかい緑色から少しずつ…夏の色彩に変わる過程の上高地の新緑は、
ニリンソウの絨毯の色彩とは違う魅力があるのです。
ホテルからは車でおよそ70分。
そして徳沢は、そこから新緑と残雪の頂の美しさをひとつひとつ心に刻みながら、ゆっくり歩いて1時間半程の所にあるのです。